読んだ本_『ドグラ・マグラ』
夢野久作の作品を読んだのは今回が初めてです。
『瓶詰の地獄』、『少女地獄』など、彼の作品はタイトルからして、どう見ても普通の作品ではなさそうなオーラを放っていて、前から気になっていた作家でした。
そして、彼の代表作である『ドグラ・マグラ』を購入したのですが、いざ読んでみると見事に奇妙奇天烈な内容です。
上巻を購入したのは去年の夏ぐらいだったのですが、百数十ページ読んだところで一度挫折しました。(約一年もたっていたんですね………)
話は九州大学の病院で記憶喪失の主人公が目を覚ますところから始まり、主人公の記憶を取り戻すという方向に話は進んでいきます。
始めの方は普通の小説のようにストーリーがしっかりとしているのですが、百数十ページ当たりに差し掛かると(最初に挫折した地点です。)正木の記した「キチガイ地獄外道祭文」という念仏のようなものが始まり、さらに彼の論文、手記などが続き、いったん物語から離れます。
そして、下巻付近から呉一郎という人物に焦点が当てられ、彼と主人公、正木、若林との関係が徐々に明らかになってゆき、物語の結末へと至ります。
私は、この作品の要約を他人に説明しようとしてもできません。
『ドグラ・マグラ』という謎のタイトル、「ブウウウウン」という言葉で物語が始まり、「ブウウウウン」という言葉で物語が終わる、巻頭歌「胎児の歌」など、何とも言えない不気味さが作品全体に拡がっています。
今回読んだのは、角川文庫の『ドグラ・マグラ』なのですが、米倉斉加年さんの表紙絵といい、カバー裏の
これを読む者は一度は精神に異常をきたすと伝えられる、一大奇書。
という説明といい、作品の不気味さを示す表現がいいですね。(私は最初、カバー裏の説明を読んで、本当に精神に異常が出るような危険な本なのではないかと思いました。)
読み通してみても、この物語を完全に理解することなどできませんが、精神科学や進化学のような内容など、意味が分からないながらも作品全体を通して作者の知識量の豊富さが感じられます。
そして、何よりこんな物語を書いた夢野久作という人物が只者ではないという印象が強く残りました。
読んだ本_『福翁自伝』
福沢諭吉の『福翁自伝』を読みました。
『福翁自伝』とは名前の通り、福沢諭吉の生涯を記した自伝です。
福沢諭吉というと、慶應義塾の創設者であり、財布の中にたくさん入っているとうれしい人ですね。福沢諭吉の作品は、小学校だか中学校だかで『学問のすゝめ』の冒頭部分は誰でも読んだことがあるのではないでしょうか。私は去年、斉藤孝さんの訳した『学問のすすめ 現代語訳』を読みました。(いつかは本来の文語体の方を読みたいです……)
この本は、福沢諭吉が大阪で生まれてから、緒方洪庵の塾での青年期の生活、渡米、渡欧、慶應義塾を設立などを経て、晩年までの生涯が綴ってあります。
一つ一つの話は、数ページにまとまっているので読みやすいです。
全体は約400ページほどで、4日間で読みました。
『学問のすゝめ』にも言えることですが、福沢諭吉の考えというのは、現代の社会でも通用するようなことがとても多いことには驚かされます。
例えば、彼は門閥制度を痛烈に批判しています。これは現代の社会における、女性やセクシャルマイノリティの平等を求める動きに当てはまります。
また、彼は鎖国や尊王攘夷の思想が当時の社会にはびこる中で、日本を海外に開国することの重要性を考え、オランダ語、英語をし、海外に渡ったり、自分の子供を海外に留学させたりもしています。これは、現代の社会がグローバル化を重要視していることと同じだと思います。
彼の本はよく、ビジネス書としても取り上げられることありますが、確かに納得できます。
福沢諭吉という経済学部が有名な慶應義塾大学の創ということになるので、さぞ経済や商売には熱心な人物なのだと思っていましたが、この本の中で自分自身が商売をすることには興味がないことや、金を借りたことは人生で一度もないなどと書いてあったのは意外でした。
福沢諭吉の自伝というと、政治や経済のことばかり書いてあるのだろうかとも思いますが、幼少期のいたづらの話や、緒方洪庵の熟成だった時に酒をやめようとして煙草に手を出した結果、両方ともやめられなくなった話など面白い話もたくさん書かれています。
この本に書かれていることは、現代の社会でも通用するようなことがたくさん書かれているので、学生から大人まで誰が読んでもためになる本だと思います。
私は今回、はじめて岩波文庫の本を購入しました。
岩波文庫というと古典作品ばかりで、どれも読むのにとても苦労する作品ばかりなのだと思っていましたが、今回購入した『福翁自伝』は新訂版であり、もともと文語体で書かれていた文章を読みやすいように直してあるので、かなり読みやすいです。
再読_『ゴリオ爺さん』
『四畳半神話大系』に続き、バルザックの『ゴリオ爺さん』を読み直しました。
500ページ超の作品なので読むのに5日かかりました。
有能だけどパリの貴族社会の豪華な面と、金や名誉を巡ってさまざまなことが起こる裏の面を目の当たりにしながら、それでも貴族社会の中に入り込んでゆこうとするウージェーヌの描写がいいです。
狂気とも言えそうなほど、2人の娘を愛し、最後には裏切られ、娘たちを恨みながら死んでいくゴリオ爺さんや、ウージェーヌと同じヴォケー館の住人でウージェーヌに興味を持ち、心を惑わし続けたヴォートランなど多くの人物が登場する群像劇の中で、それぞれの人物の個性が細かく描かれていて面白いです。
『谷間の百合』も読んでみたいなあ。